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暗号資産税制のタイムライン — いつ何が決まり、いつから変わるのか

日本の暗号資産税制が「いつ・どの機関で・何が決まったか」を一次情報リンク付きで時系列に並べた定点ページです。申告分離課税の成立日、適用が始まる日の条件、2026年8月31日に公表された令和9年度税制改正要望の中身、そして2026年9月1日時点でまだ決まっていない事項を、確認した日付とともに分けて記録します。

公開 / 最終更新

このページは、日本の暗号資産の税制について、いつ・どの機関で・何が決まったかを、財務省・金融庁・国税庁の公表資料へのリンク付きで時系列に並べた定点記録です。

制度の話は「要望が出た」「大綱に入った」「法律が成立した」「施行された」「適用が始まった」がすべて別の出来事です。報道の断片だけを見ていると、この5つが混ざります。実際、2026年8月時点の日本の暗号資産税制は、法律は成立済みだが、適用開始日はまだ確定していないという状態にあります。以下では、その順番を日付で追います。

制度が動く5つの段階

日本の税制は、毎年ほぼ同じ順路をたどります。

  1. 税制改正要望 — 各省庁が財務省に要望を出す段階。この時点では何も決まっていません
  2. 税制改正大綱 — 与党の議論を経て、政府が「令和◯年度税制改正の大綱」を閣議決定する段階。内容は固まりますが、まだ法律ではありません
  3. 法律の成立・公布 — 大綱の内容を「所得税法等の一部を改正する法律案」として国会に提出し、可決・成立する段階。ここで条文になります
  4. 施行 — 法律が効力を持つ日。条文に書かれた日、または政令で定める日です
  5. 適用 — 実際の取引や所得に新しいルールが当てはまる日。施行と同じとは限りません

暗号資産の申告分離課税は、現在3を終えて、4と5を待っている位置にあります。

時系列(2025年3月〜2026年8月)

日付何が起きたか一次情報
2025-03-07資金決済法の改正法案が国会に提出される金融庁 国会提出法案
2025-06-06同法が成立金融庁 国会提出法案
2025-12-26「令和8年度税制改正の大綱」が閣議決定。暗号資産の申告分離課税と損失の3年繰越が盛り込まれる財務省 税制改正の大綱
2025-12-26国税庁が「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」を改訂国税庁 FAQ(PDF)
2026-02-20「所得税法等の一部を改正する法律案」が閣議決定され国会に提出財務省 第221回国会提出法案
2026-03-31同法案が国会で可決・成立し、同日公布(令和8年法律第12号)財務省 税制をめぐる最近の動き
2026-03-31同法の施行に伴う関係政令(令和8年政令第93号〜第108号)と関係省令が公布財務省 令和8年度税制改正 政令 / 省令
2026-04-10「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案」が国会に提出金融庁 国会提出法案
2026-07-15同法案が成立。暗号資産の規制が資金決済法から金商法へ移管されることが決まる金融庁 法律案の概要(PDF)
2026-07-2920日後施行分に係る政令が公布金融庁 政令の公布
2026-08-07金融庁の組織再編が実施され「暗号資産・ステーブルコイン課」が新設金融庁 組織再編について
2026-08-12改正金商法のうち、無登録業に対する罰則の引上げなどが施行金融庁 政令の公布
2026-08-31金融庁が「令和9年度税制改正要望」を公表。要望書8ページに暗号資産に係る要望項目はない金融庁 令和9年度税制改正要望について / 要望書(PDF)

税制の側(所得税法等の改正)は2026年3月31日に終わっています。法律の本体だけでなく、施行に伴う関係政令16本(令和8年政令第93号〜第108号)と関係省令も、同じ2026年3月31日に公布されています。 そのなかには租税特別措置法施行令の一部を改正する政令(令和8年政令第98号)と、租税特別措置法施行規則等の一部を改正する省令(令和8年財務省令第21号)が含まれます。

残っているのは、規制の側(金商法の改正)の施行日です。この2本が連動している点が、日本の暗号資産税制のいちばん分かりにくいところです。

いま確定していること

課税方式と税率

閣議決定された大綱は、暗号資産に関する措置として次のように書いています。

居住者等が、暗号資産取引業(仮称)を行う者に対して暗号資産(金融商品取引業者登録簿に登録されている暗号資産等に限る。以下「特定暗号資産」という。)の譲渡等をした場合には、その譲渡等による譲渡所得等については、他の所得と分離して20%(所得税15%、個人住民税5%)の税率により課税する。

原文は財務省「令和8年度税制改正の大綱」個人所得課税の「三 金融・証券税制」にあります。

そして、2026年3月31日に成立した所得税法等改正法の法律案要綱(PDF)では、租税特別措置法第38条の2・第38条の3として「他の所得と分離して百分の十五の税率により課税する」と条文化されました。要綱に書かれているのは所得税分の15%で、住民税5%は地方税の側で手当てされます。

※よく見る「20.315%」は、所得税額に上乗せされる付加税を含めた表記です。国税庁は上場株式等の譲渡益について「20%(所得税15%、住民税5%)」に加えて「平成25年から令和19年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額に2.1パーセントを乗じた額を所得税と併せて申告・納付する」と説明しています(国税庁 No.1463)。15%の2.1%が0.315%です。なお同じ令和8年度改正で、復興特別所得税の税率は2.1%から1.1%へ引き下げられ課税期間が令和29年まで延長され、あわせて令和9年分以後の所得税に係る基準所得税額に対する防衛特別所得税(個人は1%)が創設されています。

対象となる取引の範囲

条文が分離課税の対象としているのは、次の条件をすべて満たす取引です。

要綱の文言は「居住者等が、暗号資産取引業者に対して暗号資産(その名称が金融商品取引業者登録簿に登録されている暗号資産等に限る。以下「特定暗号資産」という。)の譲渡等をした場合」です。この3条件のどれかを外れる取引について、分離課税の特例は書かれていません。

あわせて、暗号資産取引業者には報告義務が課されます。要綱は「当該売買等を行った日の属する年の翌年一月三十一日までに、当該居住者等の氏名、個人番号、当該特定暗号資産の名称等を記載した報告書を作成し、当該営業所等の所在地の税務署長に提出しなければならない」と定めています。上場株式等の特定口座と同じく、取引の記録が税務署に渡る仕組みです。

デリバティブ取引も別枠で手当てされました。要綱は、先物取引に係る雑所得等の課税の特例と、その損失の繰越控除の対象に「特定暗号資産に係るデリバティブ取引の差金等決済に係る雑所得等」を加えるとしています(租税特別措置法第41条の14)。

損失の繰越

要綱の文言はこうです。

特定暗号資産を暗号資産取引業者に対して譲渡等をしたことにより生じた損失の金額のうちに、その譲渡等をした日の属する年分の特定暗号資産に係る譲渡所得等の金額の計算上控除してもなお控除しきれない金額がある場合には、一定の要件の下で、その控除しきれない金額についてその年の翌年以後三年内の各年分の特定暗号資産に係る譲渡所得等の金額からの繰越控除を可能とする。

繰越は3年です。ただし控除先は「特定暗号資産に係る譲渡所得等の金額」と限定されています。上場株式等の譲渡益や配当所得と通算する規定は、要綱にも大綱にも書かれていません。

総合課税に残る暗号資産の取扱い

同じ改正法は、所得税法そのものにも手を入れています。要綱の「第1 所得税法の一部改正」5は、総合課税の譲渡所得の基因となる暗号資産について次の措置を挙げています。

分離課税の対象外となる暗号資産が総合課税の側に残ること、そしてその総合課税の側の計算ルールも同時に整理されたことが、条文から読み取れます。

適用が始まる日の決まり方

大綱は、適用開始について明確な条件を書いています。

上記1及び3の改正は、金融商品取引法の改正法の施行の日の属する年の翌年の1月1日(以下「適用開始日」という。)以後に行う特定暗号資産の譲渡等について適用する。

つまり、カレンダー上の固定日ではなく、改正金商法の施行日から逆算して決まる方式です。施行日の属する年が2026年なら適用開始は2027年1月1日、2027年なら2028年1月1日になります。

令和9年度税制改正要望に暗号資産はない(2026年8月31日公表)

金融庁は2026年8月31日、令和9年度税制改正要望を公表しました。要望書は8ページで、主な要望項目は3本の柱に整理されています。

柱要望項目
1. 「資産運用立国」の推進NISAの利便性向上等 / 銀行等の投資専門子会社による中小企業への出資に関する特例措置 / 金融所得課税の一体化(損益通算範囲の拡大)
2. 子育て世帯への支援生命保険料控除制度の拡充の恒久化等
3. 金融イノベーションの推進特定信託受益権(信託型ステーブルコイン)に係る所要の措置

この要望書8ページ全体を通して、「暗号資産」という語は一度も使われていません(要望書PDF)。前年の令和8年度要望では第3項が「暗号資産取引に係る課税の見直し」でしたから、1年で要望項目から消えたことになります。

消えた理由は、上に並べたとおり要望が通って条文になったからです。分離課税は2025年12月26日の大綱に入り、2026年3月31日に法律として成立・公布されました。5段階のうち1(要望)を終えて3(成立)まで進んだ項目は、翌年度の要望書に再掲されません。「要望から消えた=見送られた」ではない、という読み方がここでは必要になります。

要望書で暗号資産に隣接する項目は、次の2つです。どちらも要望であって、まだ条文ではありません。

3つめの「改正金融商品取引法等の施行に伴う所要の措置」は、暗号資産規制の金商法移管そのものが施行される前提で税制側の手当てを求めるものです。施行日が決まっていない段階でこの要望が出ている、という並びとして記録します。

まだ決まっていないこと

ここに並べるのは「まだ存在しないもの」です。制度の記事では、決まったことと同じくらい、決まっていないこと自体が事実になります。以下の各項目には、どの一次情報を、いつ確認して「無い」と判断したのかを書きます。確認日はすべて2026年9月1日です。

改正金商法の暗号資産部分の施行日

改正金商法は2026年7月15日に成立しましたが、条項ごとに施行日が違います。金融庁の説明資料(PDF)最終ページ「各改正事項の施行期日」の図では、施行日は次のように分かれています。

改正事項施行期日
1. 暗号資産に係る規制の見直し公布から1年以内
2. 企業のサステナビリティ情報の開示・保証令和9年4月1日
3. スタートアップ企業への資金供給の促進令和9年4月1日
4-1. 有価証券に関する不公正取引規制等の見直し公布から1年以内
4-2. 無登録業に対する罰則の引上げ等公布から20日後
4-3. 犯則調査手続をデジタル化令和9年10月1日

暗号資産に係る規制の見直しだけが、日付ではなく「公布から1年以内」という幅で示されています。実際の日は政令で定められます。2026年9月1日時点で、金融庁の報道発表一覧にこの施行日を定める政令の公布は掲載されていません。 同一覧の最新の掲載は令和8年8月31日の令和9年度税制改正要望です。改正金商法に関して直近に掲載されている政令は2026年7月29日公布のもので、これは無登録業に対する罰則の引上げ等に係る20日後施行分であり、暗号資産に係る規制の見直しの施行日を定めるものではありません。

金融庁は同じ公表で、無登録業に対する罰則の引上げ等に係る規定について「公布の日から起算して20日を経過した日(令和8年8月12日(水曜))から施行されます」と記載しています(金融庁 政令の公布)。この記述から、法律の公布は2026年7月下旬であり、「公布から1年以内」の期限は2027年7月ごろに来ることが読み取れます。

税制の適用開始日はこの施行日に連動するため、施行日が決まるまで、税率20%が適用され始める年も条文上は確定しません。施行日が2026年中に来れば適用開始は2027年1月1日、2027年に来れば2028年1月1日です。この二択のどちらになるかは、2026年8月31日時点では未確定です。

政令・内閣府令で定める細目

税制の側の政令・省令は、前述のとおり2026年3月31日に公布済みです。未確定なのは金商法の側です。

金融庁の説明資料には「詳細は内閣府令事項」「詳細は政令・内閣府令事項」と明記された項目が並びます。取扱い暗号資産の基準、業務管理体制、責任準備金の積立率、インサイダー取引規制の「大量売買」の水準(政令で発行済暗号資産の20%以上の売買等を定める予定と記載)などです。これらは制度の輪郭を左右しますが、2026年9月1日時点で、金融庁の報道発表一覧にこれらの政令・内閣府令の公布は掲載されていません。

国税庁の実務上の取扱い

国税庁の「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」は令和7年12月26日改訂版が最新です。これは現行の総合課税を前提とした内容で、分離課税の実務(取得価額の計算、年間報告書の様式、経過措置など)を扱った改訂は、2026年9月1日時点で確認できていません。同PDFのサーバ上の最終更新日時も2026年1月5日のままです。

令和9年度税制改正の大綱

要望(5段階の1)は2026年8月31日に出ました。次は各省庁の要望を財務省がとりまとめ、与党の議論を経て大綱(2)が閣議決定される段階です。2026年9月1日時点で、財務省の税制改正の概要ページに令和9年度の欄はまだありません。 同ページに掲載されている最新は令和8年度分です。

過去3年度の大綱はいずれも12月下旬に閣議決定されています(令和8年度は2025年12月26日)。令和9年度の大綱も同じ時期になるとすれば、公表は2026年12月ごろです。ただしこれは過去の日付から読める傾向であって、日程が決まっているわけではありません。

暗号資産は令和9年度の要望に入っていないため、大綱に暗号資産の新たな項目が載る根拠は、2026年9月1日時点では要望書の側にありません。要望を経ずに大綱へ入る項目が過去にないわけではないので、大綱の公表時に改めて原文で確認します。

要望に書かれていて、まだ条文になっていないもの

「要望に入っていること」と「条文になっていること」は別です。ここも、決まっていない側の記録になります。

金融庁が令和8年度税制改正で出した要望は23項目あり、そのうち第3項が「暗号資産取引に係る課税の見直し」です(財務省 令和8年度税制改正要望(金融庁))。要望の内容は次の一文です。

暗号資産取引に係る必要な法整備と併せて、分離課税の導入を含めた暗号資産取引等に係る課税の見直しを行うこと。

注意して読みたいのは税目の欄です。この要望書が挙げている税目は、所得税・相続税・登録免許税・法人税・消費税の5つです(要望事項の原文PDF)。一方、令和8年度税制改正の大綱と、成立した所得税法等改正法の要綱で暗号資産について書かれたのは、上の「いま確定していること」に並べたとおり、所得税(と個人住民税)の申告分離課税、損失の3年繰越、デリバティブ取引に係る雑所得等の特例、そして総合課税に残る暗号資産の計算ルールです。

同じ要望書は、施策の必要性の欄で次のようにも書いています。

併せて、諸外国の動向を踏まえ、我が国でも暗号資産ETF の組成を可能とするための検討を税制面を含めて行う必要。

要望書に「検討を行う必要」と書かれた事項は、その時点では要望であって制度ではありません。暗号資産ETFの組成に係る税制上の措置は、2026年9月1日時点で条文として確認できていません。そして前述のとおり、2026年8月31日公表の令和9年度要望にも暗号資産ETFの記載はありません(要望書に「暗号資産」の語自体が無いため)。令和8年度要望に一度書かれ、条文にならず、翌年度の要望には再掲されなかった項目、という位置づけになります。ビットコイン現物ETFの仕組みと日本の制度動向はビットコインETFの仕組みとフローの読み方に整理しています。

よくある誤解の訂正

「暗号資産の申告分離課税はまだ要望段階」

事実と異なります。2025年12月26日に閣議決定された令和8年度税制改正の大綱に盛り込まれ、所得税法等の一部を改正する法律案として2026年2月20日に国会へ提出、2026年3月31日に可決・成立し同日公布されています。条文はすでに存在します。

「2026年の取引から20%になる」

事実と異なります。適用開始日は「金融商品取引法の改正法の施行の日の属する年の翌年の1月1日」と大綱に定められています。改正金商法の暗号資産部分は2026年8月31日時点で施行されていないため、2026年中の取引にこの特例は当てはまりません。

「暗号資産の損失を株式の利益と相殺できるようになる」

条文にその規定はありません。繰越控除の控除先は「特定暗号資産に係る譲渡所得等の金額」と限定されています。繰り越せる年数が3年である点は上場株式等と同じですが、通算先の範囲は同じではありません。

「海外の取引所を使っても20%になる」

条文の対象は「暗号資産取引業者に対して」行う「特定暗号資産」の譲渡等です。暗号資産取引業者は改正金商法に基づく登録業者を指し、特定暗号資産はその名称が金融商品取引業者登録簿に登録されている暗号資産等を指します。この2つを外れる取引について、分離課税の特例は書かれていません。

「ステーキング報酬やマイニング報酬も20%になる」

条文が対象としているのは「譲渡等」による譲渡所得等です。譲渡等に当たらない収入について、分離課税の特例は書かれていません。個々の収入がどの所得区分になるかは国税庁の取扱いに従うことになりますが、その改訂は前述のとおり2026年8月31日時点で確認できていません。

このページの更新方針

このページは記事ではなく定点記録として運用します。次のいずれかが確認できた時点で、時系列の表に行を追加し、更新日を書き換えます。

裏付けとして毎回見にいく一次情報は、金融庁 報道発表資料、財務省 税制改正の概要、国税庁 暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)の3つです。

日々動く数値はこのページに固定しません。BTC価格と国内上場企業の評価額・含み損益は日本企業BTCダッシュボードとマーケットで15分ごとに再計算しています(保有量・平均取得単価は適時開示が出るたびに更新)。

記載の誤りや、追加すべき一次情報にお気づきの場合はお問い合わせからご連絡ください。

※本ページは公表された制度の事実を時系列に記録したものであり、個別の税務相談ではありません。個別の税務判断は税理士にご相談ください。

※本ページは情報提供であり、投資助言や特定の暗号資産の売買を推奨するものではありません。

本コンテンツは情報提供・教育目的であり、投資助言ではありません。 暗号資産は価格変動により損失が生じるおそれがあります。投資判断はご自身の責任で行ってください。

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